老後資金の不安を減らす 公的年金の仕組みと将来の受給額を知る方法【40代・50代向け】
老後資金の土台となる公的年金制度を理解する
40代後半から50代前半という年代は、多くの方がご自身の老後について具体的に考え始める時期ではないでしょうか。「老後資金は一体いくら必要なのか」「自分たちの年金は本当にもらえるのか」といった漠然とした不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
こうした老後への不安を具体的に考え、対策を立てる上で、まず不可欠なのが日本の公的年金制度を正しく理解することです。公的年金は、将来の生活を支える最も基本的な土台となります。しかし、その仕組みは複雑で分かりにくいと感じている方も多いかもしれません。
本記事では、40代・50代の会社員の方に向けて、公的年金制度の基本的な仕組みと、ご自身の将来の年金額を把握するための具体的な方法について解説します。制度を理解し、ご自身の状況を正確に知ることが、老後資金への漠然とした不安を解消し、具体的な対策へと進む第一歩となるでしょう。
公的年金制度の基本的な仕組み
日本の公的年金制度は、「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造と説明されることがよくあります。
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国民年金(基礎年金):
- 日本国内に住所のある20歳から60歳未満の全ての方が加入する年金です。
- 自営業者や学生、無職の方などが「第1号被保険者」、会社員や公務員などが加入する厚生年金や共済組合の加入者が「第2号被保険者」、そして第2号被保険者に扶養されている配偶者(原則として年収130万円未満)が「第3号被保険者」となります。
- 原則として20歳から60歳までの40年間(480カ月)保険料を納めることで、満額の老齢基礎年金を受給できます。保険料の納付期間や免除期間に応じて受給額が決まります。
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厚生年金:
- 会社員や公務員など、事業所に勤務している方が加入する年金です。
- 国民年金に上乗せされる形で、原則として給与(標準報酬月額)や賞与(標準賞与額)に応じた保険料を納めます。
- 老齢厚生年金の受給額は、加入期間や加入期間中の平均的な給与・賞与額に応じて計算されます。給与が高いほど、また加入期間が長いほど、将来もらえる年金額は増える傾向があります。
会社員の方は、原則として国民年金と厚生年金の両方に加入しており、「2階建て」の1階部分(国民年金)と2階部分(厚生年金)の合計が、将来受け取れる老齢年金となります。
なぜ40代・50代は特に公的年金への関心が高いのか
この年代になると、多くの方が「人生の折り返し地点」を意識し始めます。勤続年数も長くなり、定年退職が現実味を帯びてくる一方で、老後の生活資金について具体的に考え始める必要性を感じます。
また、少子高齢化の進行や過去の制度改正のニュースなどに触れる中で、「自分たちの世代はどのくらい年金をもらえるのだろうか」「将来年金制度は大丈夫なのだろうか」といった不安を感じやすくなります。
しかし、不安を抱えたまま対策を先送りするのではなく、まずは「ご自身が将来どれくらいの年金を受け取れる見込みなのか」を正確に把握することが非常に重要です。
将来の年金額を知るための具体的な方法
ご自身の将来の年金額を知るためには、いくつかの方法があります。特に活用したいのが、「ねんきん定期便」と「ねんきんネット」です。
1. ねんきん定期便を活用する
ねんきん定期便は、毎年誕生月に日本年金機構から郵送されてくるお知らせです。
- 50歳未満の方: これまでの年金加入期間や、各年金制度における保険料納付額などが記載されています。また、これまでの加入実績に応じた年金額(見込み額)も確認できます。ただし、これは現時点までの加入実績に基づいた額であり、将来60歳まで同じような働き方をした場合の年金額とは異なります。
- 50歳以上の方: これまでの加入実績に応じた年金額に加えて、今後も現在の加入条件(標準報酬月額など)が継続すると仮定した場合の60歳到達時における年金見込み額が記載されています。これは、より将来の受給額に近いイメージを持つことができる情報です。
ねんきん定期便が届いたら、記載内容に間違いがないか(特に加入期間など)を確認しましょう。
2. ねんきんネットを活用する
ねんきんネットは、インターネットを通じてご自身の年金記録をいつでも確認できるサービスです。ねんきん定期便よりも詳細な情報が得られ、様々なシミュレーションを行うことができます。
ねんきんネットでは、以下のような機能が利用できます。
- ご自身の年金記録の確認
- 将来の年金見込額の試算(様々な条件でシミュレーション可能)
- 電子版「ねんきん定期便」の確認
- 各種通知書の確認
特に便利なのが「将来の年金見込額の試算」機能です。ねんきんネットにログインし、この機能を使うことで、以下のような条件を変更して、ご自身の年金見込額を試算できます。
- 今後何歳まで働くか
- 今後の働き方(会社員を続けるか、自営業になるかなど)
- 今後の収入(標準報酬月額)がどのように推移するか
例えば、現在の給与水準で60歳まで働いた場合、65歳から受け取れる年金見込額や、65歳以降も働き続けた場合の年金見込額などを、ご自身のライフプランに合わせて試算することが可能です。
ねんきんネットを利用するためのステップ:
- 「ねんきんネット」のウェブサイトにアクセスします。
- 「新規登録」を選択し、ユーザーIDを取得します。ねんきん定期便に記載されているアクセスキーを利用すると、すぐにユーザーIDを取得できます。アクセスキーがない場合でも、基礎年金番号などの情報で登録申請が可能です(後日郵送でユーザーIDが届きます)。
- 取得したユーザーIDとご自身で設定したパスワードを使ってログインします。
- ログイン後、「年金見込額試算」メニューに進み、画面の指示に従って試算条件を入力します。
- 試算結果を確認します。
このねんきんネットを使った試算は、将来の年金額を具体的にイメージする上で非常に役立ちます。ぜひ一度、ご自身の条件で試算してみてください。
シミュレーション結果から対策を考える
ねんきん定期便やねんきんネットで将来の年金見込額を把握できたら、それを基にご自身の老後資金計画を立てることができます。
例えば、月額20万円の生活費が必要だと仮定し、公的年金で月額15万円受け取れる見込みであれば、毎月5万円、年間60万円が不足する計算になります。65歳から90歳までの25年間で考えると、不足分の合計は約1,500万円となります(物価変動や金利は考慮しない単純計算)。
このように、具体的な不足額が見えてくると、それを補うためにどのような対策が必要かを検討しやすくなります。考えられる対策としては、以下のようなものがあります。
- 資産形成: iDeCoやつみたてNISAなどを活用し、計画的に資産運用を行い、年金以外の収入源や取り崩せる資産を作る。
- 働き方の見直し: 60歳以降も働くことを検討し、収入を得ながら年金の受給開始を遅らせる(繰り下げ受給により年金額を増やす)。
- 支出の見直し: リタイア後の生活費を抑えるための工夫をする。
- 個人年金保険の活用: 保険会社が提供する個人年金保険に加入し、私的な年金を用意する。
これらの対策は、一つだけでなく複数を組み合わせて行うことも可能です。どのような対策がご自身の状況に最適かは、個々のライフプランやリスク許容度によって異なります。
まとめ: まずは「知る」ことから始めよう
老後資金に対する不安は、多くの場合、「分からない」ことから生じます。ご自身の公的年金が将来いくらもらえる見込みなのかを知ることは、その不安を解消し、現実的な対策を立てるための第一歩となります。
ねんきん定期便をしっかりと確認し、さらにねんきんネットを活用して、ご自身の将来の年金見込額を具体的にシミュレーションしてみてください。制度を理解し、ご自身の状況を正確に把握することで、老後への漠然とした不安を具体的な課題として捉え直し、前向きな行動へと繋げることができるでしょう。
公的年金は老後資金の基礎ですが、それだけで十分な生活を送れるとは限りません。今回のシミュレーション結果を踏まえ、必要に応じてiDeCoやNISA、資産運用などの他の資産形成方法についても情報収集を進め、ご自身のライフプランに合わせた計画を立てていくことをお勧めいたします。