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40代・50代が知っておくべき老後の医療費・介護費 不安を減らす具体的な対策

Tags: 老後資金, 医療費, 介護費, 公的制度, ライフプラン

はじめに:老後の医療費・介護費への漠然とした不安

老後資金について考え始める40代、50代の方にとって、どれくらいの費用が必要になるのか、特に医療費や介護費は大きな不確定要素であり、漠然とした不安の原因となっているのではないでしょうか。公的年金や退職金、これまでの資産形成で、おおよその生活費は見えてきても、「もし病気や介護が必要になったら…」と考えると、必要な金額が分からなくなり、計画が進まないというお声も少なくありません。

この記事では、そうした老後の医療費・介護費に関する不安を解消するため、データに基づいた一般的な費用の目安や、利用できる公的な制度、そして具体的な備え方について解説します。情報を整理し、現実的な数字を知ることで、漠然とした不安を具体的な対策へと変える一歩を踏み出しましょう。

老後の医療費・介護費、実際どれくらいかかる?

老後に必要となる医療費や介護費は、個人の健康状態や利用するサービスによって大きく変動します。しかし、統計データから一般的な傾向を知ることは、計画を立てる上で非常に参考になります。

医療費の目安

生命保険文化センターの調査(2022年度)によると、高齢者夫婦世帯の年間医療費は平均で約38万円程度というデータがあります。また、一時的な大きな病気や手術などによる高額な医療費が発生する可能性も考慮する必要があります。

ただし、日本では公的な医療保険制度があり、年齢や所得に応じて自己負担割合が定められています。75歳以上の方(後期高齢者医療制度の被保険者)は、現役並み所得者を除き、自己負担割合は原則1割または2割です。

介護費の目安

生命保険文化センターの調査(2021年度)によると、介護期間は平均5年1ヶ月、かかった費用は一時費用の合計が平均74万円、月々の費用が平均8.3万円となっています。合計すると、一人あたり約500万円を超える費用がかかる計算になります。

これもあくまで平均値であり、介護が必要となる期間や、自宅での介護か施設での介護かによって費用は大きく変わります。

不安を和らげる公的な制度を知る

老後の医療費や介護費は全額自己負担ではありません。日本の公的な医療保険制度と介護保険制度には、費用負担を軽減するための仕組みがあります。

医療費の軽減制度:高額療養費制度

高額療養費制度とは、同じ月にかかった医療費の自己負担額が、年齢や所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、超えた分の金額が払い戻される制度です。これにより、医療費の窓口負担には上限が設けられています。例えば、70歳以上の一般所得者の場合、外来の自己負担上限額は月18,000円、世帯合計の場合は月57,600円などと定められています。

この制度があるため、たとえ大きな病気で医療費が高額になっても、際限なく自己負担が増えるわけではありません。

介護費の軽減制度:高額介護サービス費

高額介護サービス費制度とは、同じ月に利用した介護サービスの自己負担額が、所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、超えた分の金額が払い戻される制度です。これにより、介護サービスの自己負担にも上限が設けられています。例えば、現役並み所得者を除く世帯の場合、自己負担上限額は月額44,400円などと定められています(2021年8月からは、特に所得の高い層の上限額が見直されています)。

医療費と同様に、介護サービスにかかる費用も、この制度によって自己負担の増加を抑制することができます。

老後の医療費・介護費を具体的に見積もる

公的な制度で自己負担には上限があるとはいえ、毎月の自己負担額が発生する可能性はあります。ご自身の老後資金計画において、医療費・介護費をどのように見積もれば良いでしょうか。

  1. 一般的な統計データを知る: 前述のような平均値や、ご自身の年齢に近い層の統計データを参考に、大まかな費用感を把握します。
  2. 公的制度を理解する: 高額療養費制度や高額介護サービス費制度の自己負担上限額が、ご自身の所得区分の場合いくらになるのか確認します。これが、月に発生する可能性がある自己負担の最大目安となります。
  3. 期間を見積もる(シミュレーション): 介護期間の平均は約5年というデータがありますが、これより長くなる可能性も考慮し、例えば5年、7年、10年といった複数の期間でシミュレーションしてみます。
    • 例:月の自己負担上限額が44,400円の場合、5年間(60ヶ月)で約266万円、7年間(84ヶ月)で約373万円が必要となる可能性があると見積もることができます。(これはあくまで自己負担上限額が続いた場合の最悪ケースに近い試算であり、実際は変動します。)
  4. 一時費用を考慮する: 介護が必要になった際の自宅改修費用や、介護ベッドの購入費用など、一時的にまとまった費用が必要になる可能性も考慮に入れておくと良いでしょう。前述の通り、平均74万円というデータがあります。

これらの情報をもとに、「仮に介護が7年間必要になり、毎月自己負担上限額の約4.5万円がかかり、加えて一時費用として100万円が必要になった場合、合計で約400万円〜500万円程度の費用が必要になるかもしれない」といった形で、ご自身の状況に合わせた金額を試算してみることが重要です。

老後の医療費・介護費への具体的な備え

具体的な費用が見えてきたら、どのように備えていくかを検討します。

1. 計画的な貯蓄

最も基本的かつ重要な対策は、老後資金全体の貯蓄計画に、医療費・介護費用の見積もり分を組み込むことです。iDeCoやつみたてNISAなど、現在取り組んでいる資産形成に加え、これらの費用を賄うための資金を別途確保していくことを検討します。特に、iDeCoやつみたてNISAで運用している資金は、すぐに引き出せない、あるいは引き出す際に税金がかかる場合があります。医療費・介護費は比較的短期間でまとまった資金が必要になる可能性もあるため、一定額は流動性の高い形で準備しておくことも考えられます。

2. 民間医療保険・介護保険の活用検討

公的な制度である程度カバーされるとはいえ、自己負担分や、公的医療保険・介護保険の対象とならないサービスもあります。民間の医療保険や介護保険は、こうした自己負担分や、一時費用などをカバーするために活用できます。

ただし、保険商品には様々な種類があり、保障内容や保険料も異なります。現在の健康状態やご自身の資産状況、家族構成などを踏まえ、本当に必要かどうか、どのような保障内容が必要かを慎重に検討することが重要です。特に、40代・50代から加入する場合、保険料が高くなる可能性もあります。複数の商品を比較検討し、不要な保障を付けないように注意しましょう。

3. 自治体のサービスや地域の支援情報を収集

各自治体では、高齢者向けの医療費助成制度や、介護予防、生活支援などのサービスを提供している場合があります。こうした地域の情報を収集しておくことも、将来の負担軽減に繋がります。

まとめ:情報武装で不安を対策へ変える

老後の医療費や介護費は、誰にとっても未知数であり、不安を感じやすいテーマです。しかし、統計データに基づいた一般的な費用目安や、高額療養費制度・高額介護サービス費制度といった公的な仕組みを知ることで、漠然とした不安を具体的な数字で捉えることができます。

ご自身の状況を踏まえて現実的な費用を試算し、それに対して計画的な貯蓄、必要に応じた民間の保険活用、公的な制度や自治体サービスの活用を組み合わせることで、具体的な備えを進めることが可能です。

不確実な未来に対して完璧な準備は難しいかもしれません。しかし、情報を集め、理解し、今できることから対策を始めることが、老後の不安を和らげ、安心して将来を迎えるための最も確実な方法です。この記事で得た情報が、あなたの老後資金計画を見直し、新たな一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。ご自身の正確な状況に合わせた計画を立てるためには、専門家への相談も有効な手段の一つです。