40代・50代必見 老後資金の投資リスク管理 ポートフォリオのリバランス方法
投資ポートフォリオ、築いた後の「放置」は大丈夫ですか?
40代後半から50代前半にかけて、老後資金の準備として資産運用に取り組んでいらっしゃる方も多いことと思います。iDeCoやつみたてNISAなどを活用し、ご自身の目標とする資産配分に基づいてポートフォリオを構築された方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、一度ポートフォリオを組んだ後、そのまま「放置」していないでしょうか。市場は常に変動しており、購入当初の資産配分は時間の経過とともに必ず変化します。例えば、ある資産クラス(例: 株式)が大きく値上がりし、別の資産クラス(例: 債券)があまり値上がりしなかった場合、全体の資産に占める株式の割合が必要以上に高まってしまいます。
このように、市場の変動によってポートフォリオの資産配分が当初計画したものからずれてしまうと、想定していたリスク・リターンバランスが崩れてしまう可能性があります。最悪の場合、老後資金を取り崩す時期に大きな損失を被るリスクが高まることも考えられます。
そこで重要になるのが、「リバランス」という作業です。本記事では、老後資金のための投資において、なぜリバランスが重要なのか、そして具体的にどのように行うのかについて解説します。
ポートフォリオのリバランスとは?なぜ必要なのでしょうか
ポートフォリオのリバランスとは、市場の変動によってずれてしまった資産配分を、当初計画していた目標の資産配分に戻す作業のことです。
例えば、「株式50%、債券50%」という目標資産配分で運用を開始したとします。1年後、株式市場が好調で株式部分が1.5倍になり、債券はほとんど値動きしなかった場合、ポートフォリオ全体の評価額における株式の比率が50%を超え、債券の比率が50%を下回る状態になります。
このまま放置すると、ポートフォリオ全体が当初よりも株式に偏り、リスクの高い構成になってしまいます。リバランスは、この崩れたバランスを元に戻すために行います。
リバランスが必要な主な理由は以下の2点です。
- リスクの調整: 資産配分が崩れることで、想定以上のリスクを抱えてしまうことを防ぎます。値上がりした資産(リスクが高まっている可能性)を一部売却し、値下がりした資産(相対的にリスクが低下している可能性)を購入することで、リスクを一定に保つ効果が期待できます。
- 目標資産配分の維持: 当初設定した目標資産配分は、ご自身の年齢、リスク許容度、運用期間などを考慮して決定されたものです。リバランスを行うことで、その目標配分を維持し、計画通りの運用を続けることができます。
リバランスの頻度とタイミング
リバランスを行う頻度やタイミングに厳密な正解はありませんが、一般的には以下の方法が考えられます。
- 定期的なリバランス: 半年に1回、または1年に1回など、あらかじめ決めた期間ごとにリバランスを行います。市場の状況にかかわらず機械的に実施するため、判断に迷うことが少なく、計画的に行いやすいというメリットがあります。
- 乖離率に基づくリバランス: 個別の資産クラスの比率が、目標とする比率から一定以上(例: 5%や10%など)乖離した場合にリバランスを行います。頻度は不定期になりますが、市場の大きな変動に対応しやすいというメリットがあります。ただし、頻繁に行いすぎると手数料や税金の負担が増える可能性もあります。
どちらの方法を選ぶかは、ご自身の運用スタイルやポートフォリオの特性によって異なります。多くの個人投資家にとっては、分かりやすく続けやすい「定期的なリバランス(年1回など)」が現実的な選択肢となるでしょう。
具体的なリバランスの方法
リバランスの具体的な方法としては、主に以下の2つが挙げられます。
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売却と購入による方法:
- 目標よりも比率が高くなった資産クラスの一部を売却します。
- その売却代金で、目標よりも比率が低くなった資産クラスを購入します。
例えば、目標「株式50%:債券50%」、現在のポートフォリオ評価額1,000万円で「株式700万円(70%):債券300万円(30%)」になっていたとします。 この場合、目標比率に戻すためには、株式の金額を500万円にする必要があります。株式を200万円分売却し、その200万円で債券を購入します。結果、株式500万円、債券500万円となり、目標の「50%:50%」に戻すことができます。
この方法は、ポートフォリオ全体を調整できる利点がありますが、売却益が出ている場合は税金が発生する点に注意が必要です。また、売買手数料がかかる場合もあります。
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追加投資による方法:
- 積立投資などで定期的に発生する新たな投資資金を、目標よりも比率が低くなっている資産クラスに集中的に投資します。
例えば、目標「株式50%:債券50%」、現在のポートフォリオ評価額1,000万円で「株式700万円(70%):債券300万円(30%)」になっていたとします。 この状態から、毎月5万円を新規に投資する場合、その5万円を全て債券に投資することを継続します。新規投資によって債券部分の金額が増えていくことで、徐々にポートフォリオ全体の債券比率を高め、目標の資産配分に近づけていきます。
この方法は、売却による税金が発生しない(積立投資の場合)というメリットがあります。一方で、売却と購入による方法に比べて、目標資産配分に戻すまでに時間がかかる場合があります。特に、ポートフォリオの乖離が大きい場合は、この方法だけでは十分にリバランスできないこともあります。
どちらの方法を用いるかは、ポートフォリオの乖離状況や、積立投資を行っているかどうかなどを考慮して判断します。多くの場合、積立投資を続けながら、必要に応じて売却・購入を組み合わせるのが現実的でしょう。
リバランスを行う上での注意点
リバランスはリスク管理において有効な手法ですが、いくつか注意しておきたい点があります。
- 税金: 投資信託などを売却して利益(譲渡益)が出た場合、原則として税金(所得税・住民税、合計20.315%)がかかります。特定口座(源泉徴収あり)を利用していれば自動で税金が差し引かれますが、NISAやつみたてNISA口座内での運用益は非課税となるため、これらの口座で運用している資産を売却しても税金はかかりません。どの口座で運用しているかを意識することが重要です。
- 手数料: 投資信託の売買には手数料(信託財産留保額など)がかかる場合があります。最近は購入時手数料や信託財産留保額がかからないファンドも増えていますが、保有しているファンドの手数料体系を確認しておきましょう。
- 市場状況に一喜一憂しない: リバランスは、感情に左右されずに機械的に行うことが望ましいとされています。値上がりした資産を売却することに抵抗を感じたり、値下がりした資産を購入することに不安を感じたりすることがあるかもしれませんが、当初決めたルールに従って淡々と実行することが、長期的な資産形成においては重要です。
リバランスを効率的に行うために
日頃からデジタルツールに慣れている方であれば、リバランスを効率的に管理するためのツール活用も考えられます。
- 証券会社のツール: 一部の証券会社では、ポートフォリオの資産配分を可視化できるツールや、自動リバランス機能を備えたサービスを提供しています。ご自身の利用している証券会社のサービスを確認してみましょう。
- スプレッドシート(ExcelやGoogle Sheets): ご自身でポートフォリオの状況を記録し、現在の資産配分と目標資産配分を比較する表を作成することで、リバランスが必要かどうかの判断や、必要な売買金額の計算を効率的に行うことができます。関数などを活用すれば、乖離率の計算なども自動化できます。
まとめ
老後資金のための資産運用において、ポートフォリオのリバランスは、当初想定したリスク・リターンバランスを維持し、長期的な目標達成に向けた重要なリスク管理手法です。市場の変動によって資産配分は必ずずれていくため、定期的な見直しとリバランスを行うことが、計画通りの資産形成に繋がります。
ご自身のポートフォリオの状況を確認し、どのくらいの頻度で、どのような方法でリバランスを行うか、事前にルールを決めておくことをお勧めします。もし現在、ポートフォリオの確認やリバランスをしばらく行っていない場合は、この機会にご自身の資産配分を見直してみてはいかがでしょうか。不安を具体的な行動に変える一歩となるはずです。